こんにちは。
ハレラボの心理セラピスト、ひがしさやかです。
あなたには、自分の中で相反する気持ちがぶつかり合うことはないでしょうか?
例えば、
「勉強したい」のに、「勉強したくない」
「過食をやめたい」のに、「食べたい」
「人に近づきたい」のに、「人に近づくのが怖い」
「加害的な人から離れたい」のに、「離れることができない」
他にも、セラピーを通して「よくなりたい」のに、「よくなるのを避けたい」…ということもあるかもしれません。実はこれ、ちっともおかしなことではありません。
お悩みの背景には、必ずと言っていいほど、この、相反する自己がぶつかり合う…「葛藤」が起こっています。
葛藤の理由をみていくと、そこにはやむにやまれぬ、無意識からの大切なメッセージが隠れていることがあります。
その無意識からの声に耳を傾けることが、お悩みの解決や、心に安心感や愛着基盤を作るための重要なポイントになっていきます。
このコラムでは、葛藤が起こる理由と、解決に向けてのアプローチを、パーツ心理学の視点を通してみていきたいと思います。
*・*・こんなお悩みを抱えている方へ・*・*
- 心ではこうしたいと思っているのに、行動では矛盾した全く別の行動をとってしまう
- 自分の行動や意志がその時々でバラバラで、一貫性がなく、自分でもどうしてそうなってしまうかわからない
- 葛藤のはざまにいて、身動きが取れなくて苦しい
*・*・このコラムを読むと、こんなことがわかります・*・*
●葛藤の理由と向き合い方
●心の内側に愛着を育むアプローチ
あなたにはどんな部分がありますか?
−−−あなたには、どんな部分がありますか?
例えば、真面目な部分、優しい部分、厳しい部分、遊び心がある部分、怒りっぽい部分、自信がない部分…
さまざまな部分がありますよね。
場面や状況、時間、相手などによっても表に現れてくる部分は変化します。
職場では、テキパキと冷静な部分で仕事をこなす一方、家では、ちょっと抜けててのんびりした部分で過ごしている。あるいは、いつもは元気で明るい部分で人と接しているけど、お腹が空くと怒りっぽい部分が出るなどなど…
この「部分」は、性格とか、人格とか、〇〇なところ、〇〇な状態と言いかえることもできます。
パーツ心理学では、こういった、自分の中のさまざまな側面(=性格・感情・思考・身体状態など…)を「パーツさん」と呼んでいます。
そういった、さまざまなパーツさんを内包しているのが「私」だと思ってもらえるといいと思います。
つまり、「パーツさんの集合=自分」 なのですが、、、
自分のことって、自分ではなかなかわからないものですよね。お悩みの渦中にいれば、なおさら。
ですから、すこーし自分と距離を置いて、客観的に自分のさまざまな部分を 「パーツさん」 として眺めてみることで、自分自身への理解を深めていくことができるんですね。
葛藤とバラバラなパーツさんたち
さて、葛藤が起こる時、、、それはパーツさん同士がバラバラな方向を向いている時です。
「勉強をしたいのに、勉強が手につかない時」を例にして考えてみましょう。(※「勉強」を、「仕事」や「やらなくてはいけないこと」と読み替えてもらってもいいと思います)
そんな時、自分の中に、どんな思考や感情、状態、身体反応が起こりますか?
・勉強をしなきゃいけないと思う
・やらないと怒られる!と焦る
・身体がだるくなる、気が重くなる
・眠くなる
・急に部屋を片付けたくなる
・遊びたくなる
・逃避したいと思う
・他のことが気になって散漫になる
…あなたにも、ありませんか?
やらなきゃいけないことに向き合おうとした途端、眠くなったり、体が重くなったりすること。気がついたらSNSをしていたこと。その他、別のことが気になって手に付かないこともありますよね。
これらを「パーツさん」として捉えると、それぞれが、バラバラな方向を向いていることがわかります。
「私は、勉強したい!」
「私は勉強したくない…現実逃避したい…」
「眠いよ〜」
「他にもやらなきゃいけないことがあるんだけど!」
勉強! ↖︎ ↗︎ 眠い〜
逃避♪ ↙︎ ↘︎ 他のタスク!
一人の心の中で、たくさんのパーツさんが、各々のやり方で行動したり思考したり…
ここに、「葛藤」が生まれます。
自分でも理解できない矛盾した行動をとってしまったり、葛藤がなかなか解決しない理由はここにあります。
そして、一部のパーツさんは、はっきりと認識されていなかったり、邪魔な存在として扱われていることも多いんですね。
だから意識だけは、「勉強したい!」なのに、ふと気づいたら、SNSに没頭していた…なんてことが起こります。
特に、悩みを解決しようとするとき、現実を妨害してくるように見えるパーツさんを無視したり、排除したり、無理やり矯正しようとしてしまいがちです。
…でも、それでは葛藤は解決しないんですね。
無視したり、無理に抑えつけようとすればするほど、そのパーツさんの声は大きくなり、存在感が増します。「気づいて〜!!無視しないで!!」と。
一旦は、矯正できたとしても、後から反動となって元に戻ってしまいます。
誰だって、無視されたり強要されるのは嫌ですよね。
それに…パーツさんを排除しようとするやり方は、自分を否定することと同じなんです。パーツさんはあくまでも、自分の一部。どんなパーツさんもかけがえのない大切な存在です。
では、バラバラなパーツさんたちをどうしていけばいいのでしょうか?
そこで大切になるのが、対話です。
パーツさんと対話する
たくさんの人が集まった時、その意見をまとめるためにはどうしますか?
そう、話し合いますよね。相手のことをよく知り、お互い理解する努力をし、その上で最善の方向へ意見をまとめていきますよね。
同じように・・・
まず大切なのは、パーツさんそれぞれの話をよく聞くことです。
一見すれば、現実を台無しにしてくるパーツさんにも、必ず、そうしている肯定的な理由があります。
例えば、どんな想いがあって、そうしているのか?
どんな役割があって、そうしているのか?…
深く、丁寧に、耳を傾けていくことが大切です。
先の「勉強したくない」逃避したいパーツさんに丁寧に理由を聞いていくと、、、「勉強しようとすると、お母さんに怒られながら、勉強を強制されていた苦しい感覚を思い出してしまう。叱責を受けている時は、いつも楽しいことを妄想してその時間が過ぎるのを待っていたんだ。逃避はあなたを守るためだよ」なんてことを教えてくれるかもしれません。
トラウマ体験からサバイバルするために、止むに止まれず、そうしてきたのです。
こんな風に、必ず、切実な理由があります。
特に、強い葛藤や、極端な行動、コントロールできないこと、日常を乗っ取ってしまう反応、否認や自己批判、、、そういった背景にはトラウマからサバイバルしてきてくれたパーツさんの存在があります。
このように、パーツさんたちの中には、意識されていない、無意識の意図や理由、想いが隠れています。聞いてみると、忘れていたけど、本当はよく知っていたな思うこともあります。
自分の内側から出てくる応えは、誰かが強制したり、押し付けたりするものとは違って、腑に落ちることも多いものです。
そうして、パーツさんの意図がはっきりしてくると、極端な行動を起こさなくてもいいのか…と葛藤がゆるんでいくことがあります。また、お互いに意識されないまま、行動していたパーツさんたちも、それぞれの存在を知ることで、足並みが揃うようになっていきます。
最終的には、バラバラなパーツさんたちが、統合されて、バランスよく活動できるようになっていくといいのですが、それはあくまで結果です。
それよりも、この対話の過程が、とても重要です。
パーツさんを通して、自分に耳を傾けること、自分自身を深く知ること、「私ってダメだと思ってたけど、実はそうじゃないんだ」と気がつくこと…
そういった体験が、自分自身への信頼や自己を適切に愛する感覚を育んでくれる過程となります。
もちろん、中には、好きになれないパーツさんも出てきます。そこを無理に好きになる必要もなくて、ただ好きになれないことに寄り添う、嫌なパーツさんが自分の中に存在している理由を知る、、、そういった体験が大切になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は「パーツ」という視点を通して、葛藤についてみていきました。
少し抽象的にも思えるかもしれませんが、自分の中にいる、相反する自分たちを「パーツさん」として一つ一つ掘り下げていくことで、葛藤の理由を深く整理していくことができるようになります。
そして、対話を通して、自分をよく知り、自分との関係をスムーズにしていくことで、愛着の基盤を育むことができます。それは外から得られる一時的な安心感とは違って、心の内側に根付くおだやかな安心感となります。
それでは、今回はここまで。
あなたの心が晴れますように。
パーツさんとの対話はセラピーの中でもサポートしています。
ご相談はこちらから。
参考資料
「トラウマによる解離からの回復 断片化された「わたしたち」を癒す」ジェニーナ・フィッシャー著/浅井咲子訳 国書刊行会
「内的家族システム療法スキルトレーニングマニュアル」フランク・G・アンダーソン/マーサ・スウィージー/リチャード・C・シュワルツ著/浅井咲子・花丘ちぐさ・山田岳訳 岩崎学術出版社ほか