ハレラボの心理療法

SE™療法(Somatic Experiencing®)

Somatic Experiencing®(ソマティック・エクスペリエンシング 以下 SE™療法)とは、アメリカのピーター・ラヴィーン博士が開発した、身体と神経系を統合する、安全かつ自然なトラウマ療法です。NASAアメリカ航空宇宙局でも使用されています。

心理学者であると共に神経生理学者でもあるラヴィーン博士は、トラウマとは「出来事に対して神経系がいかに反応するか」の問題であるとしました。

動物(人間)は危機に直面した際、戦う逃げる凍りつく(硬直) のいづれかの防衛反応をとります。

圧倒的な脅威に対しては逃げられるときは逃げますし、逃げ場がないときには戦うこともありますが、その両方ともうまく行かなかった場合は、凍りつくというパターンを取ります。

①戦う
②逃げる
③凍りつく

逃げるときも戦うときも、人間(動物)の神経系はフル活動しています。凍りついているときも、一見何も起きていないように見えて、実は体内では神経系が全速力で活動を行い、膨大なエネルギーを作り出しています。

ラヴィーン博士はトラウマはこの「凍りつき」反応と関係があることを発見しました。

凍りつきには、逃げきれなかった場合に、その瞬間の苦痛を感じずにすむというメリットがあります。
交通事故に遭った人が、事故の瞬間を覚えていなかったり、子ども時代の虐待の被害者が、その出来事を覚えていなかったりすることはよくあります。これは、生物にとって、意識が身体にとどまっているのがあまりに衝撃が強い場合、苦痛を避けるために、肉体から感覚を切り離した「解離(かいり)」の状態になるからです。

野生動物の場合なら、死んだふり(凍りつき)をすることで、捕食動物のスキを突いて逃げ出すことができます。また、捕食動物によっては、動いている獲物しか狙わないため、追うのをやめることもあります。

そうして敵が立ち去れば、襲われた動物は凍りつき状態を解き、身震いして過剰なエネルギーを振り落とし、自由に動ける状態にまで回復していきます。

動物は、このプロセスを自然に行うことで、身に起こる脅威や危険を「トラウマ」として抱えずにすむことが出来るのです。これは原始的な脳による、本能の行動です。

(よかったら動画でその様子を観察してみてくださいね。捕獲されている姿に驚かれるかもしれませんが、最終的に凍りつき反応によって助かります)

インパラが凍りつきから動き出すまでの様子

しかし、人間の場合は、あまりに発達した脳の知的部分(大脳新皮質)が意味づけや理由付け、不都合な体験の抑圧をしてしまうことがあるため、本来動物が持っている自然な「エネルギーの解放」が起こりません。そのために、過剰なエネルギーは「凍りつき」が起こったまま行き場を失い、神経系の中で解放されずに蓄積されたままになってしまいます。

ラヴィーン博士は、この、行き場を失って蓄積された過剰なエネルギーが、トラウマに起因する色々な症状を作り出していると考えました。

トラウマスペクトラム障害(トラウマ性ストレスと精神病理)

人間の脳の本能をつかさどる部分は、他の生物、原始時代の脳とほぼ同じままです。危機に際してはエネルギーを全力で放出して危険に対処するよう、人間の脳と身体はいまでもプログラムされています。

しかし、このエネルギーを一気に解放することは大きなリスクを伴うことが多く、そうした治療法の多くは効果があまりないことが明らかになっています。そのため、蓄積された膨大なエネルギーを自然な方法で、少しずつゆっくりと解放させていくことがトラウマ治療のポイントになります。ラヴィーン博士は、「癒しのプロセスは、劇的でなければないほど、またゆっくりと起これば起こるほどより効果的である」と述べています。

SE™療法は、人間が本来の動物と同じ様に持っている「身体感覚」を主に使った、新しいタイプのトラウマ療法です。この療法では、神経系がトラウマによって抱えた過剰なエネルギーのゆっくりとした解放を目指しているため、トラウマやその体験について「言葉で」語ることは重視されません。身体の状態を感じ、それに呼応して身体が自然に反応し、身体が少しずつエネルギーを解放していくことをサポートします。

これまでのトラウマ治療は、主に心理面からのみ語られ、身体面からはほとんど語られることがありませんでした。これが従来の治療法とは異なる画期的なところです。

SE™療法はトラウマやその他のストレス障害を癒すために、心理療法、医学、コーチング、教育、理学療法など、複数の職種や専門的な場面で応用されている身体志向の治療モデルです。生理学、心理学、倫理学、生物学、神経科学、先住民の治療法、医療生物物理学などの学際的な交差に基づいて、40年以上にわたって臨床に応用されています。

参考・引用元リンク:https://www.sejapan.website/se-療法とは/